所員研究「ポートフォリオ評価に関する研究」のページ(2001.6.4.更新)
平成12年度から「ポートフォリオ評価に関する研究」と題して,実践研究に取り組んでいます。このページを御覧の先生方も,今日から総合的な学習の時間にポートフォリオ評価を取り入れてみませんか。興味を持たれた方,始めてみようかなと思われた方は,電子メールで御連絡ください。まだ完成したものではありませんが,教育工学研究室オリジナルの「ポートフォリオ評価入門」マニュアル(前半部分)を随時御提供いたします。マニュアルはパワーポイントで制作しておりますので,ファイルを電子メールに添付してお送りします。

このページの目次

第1章 ポートフォリオ評価とは何か?

1.ポートフォリオ評価のとらえ方
2.なぜ,今ポートフォリオ評価なのか
3.昨年度の研究から
4.本研究でのポートフォリオ評価


第2章 総合的な学習の時間へどう組み込むか?

1.総合的な学習の時間の基本学習モデル
2.ポートフォリオ収集の時期
3.児童生徒の自己評価や教師の見取り

(資料)
総合的な学習の時間の評価の観点

第1章 ポートフォリオ評価とは何か
1.ポートフォリオ評価のとらえ方

 ポ−トフォリオとは,児童生徒が学習の過程で収集した資料やメモ,作品などを学習ファイルの保存した学習ファイルのことを指します。しかし,「ポートフォリオ評価」となると,研究者や実践者によって,考えやその適用方法にかなりの差異が見られます。そこで,本研究では,ポートフォリオ評価を総合的な学習の時間に導入することを前提として,ポートフォリオ評価を次のように捉えます。
 (1) 児童生徒がポートフォリオを用いて行う自己評価
 (2) 教師が児童生徒のポートフォリオを用いて行う他者評価
 この他にも,ポートフォリオは児童生徒の相互評価にも役立ちますが,その相互評価も結局は自己評価に集約できるので,(1)に含めることにします。
 従って,ポートフォリオ評価の目的は教師にとっては,次の二点になります。
 (1) 児童生徒の自己評価能力の育成
 (2) 児童生徒の学習状況を評価するための教師による見取り


2.なぜ今ポートフォリオ評価なのか?

(1) 児童生徒の自己評価能力の育成
   児童生徒はポートフォリオを用いて自らの学習を振り返ります。教師は児童生徒の振り返しを促すような支援や指導を行います。これを繰り返しているうちに,児童生徒は,自分の学習を振り返り,「自分はここまでできるようになった,しかし,まだここが不十分だ」ということが自分で分かるようになってくると考えます。これが自己評価能力が育ってきた状態です。しかし,ポートフォリオ評価では,その状態ではよしとしません。更に,「これは大丈夫だから,次はこれをしよう」とか「ここが不十分だから,次はこうしなければ」と以後の学習を自分自身でコントロールし,学習を進めることができるようになることを目指します。この学習をコントロールする能力をここでは,「自己調整力」と呼ぶことにします。
 この自己調整力が育成されれば,主体的な学習ができるし,自ら問題を解決する力も身に付くということで,総合的な学習の時間のねらいにも沿ったものになり,「生きる力」の育成にもつながります。
(2) 児童生徒の学習状況を評価するための教師による見取り
 新指導要録では,総合的な学習の評価の評価については,観点を記載した上で,児童生徒にどのような力が身に付いたかを文章で記述するようになりました。教師にとっては何よりもその指導要録や通知票などに記載するための評価の資料が欲しいところです。ポートフォリオの中にある収集物を用いることで,児童生徒がどのような力を身に付けているかを見取ります。その見取りを集めておき,指導要録や通知票などの評価について記入するときに用います。

3.昨年度の研究から
 
 ポートフォリオ評価というと,児童生徒が学習の過程で収集した資料を見直して,児童生徒が自らの成長を自覚したり,教師が児童生徒の学びを見取ったりするといった考えがあります。ところが,昨年度の研究の結果,児童生徒が,資料や感想文などの収集物をもとにして自己評価をするのは非常に困難であること,また,教師がそれらの資料を見直して児童生徒の学びを見取るには多大な労力と時間を要すこと,などが明らかになりました。
 そこで,本研究では,ポートフォリオには,児童生徒の自己評価を促すもの,また,教師の見取りに役立つものを教師が意図的・計画的に収集するよう指導することとします。

4.本研究でのポートフォリオ評価
図1に示したように,本研究では,ポートフォリオ評価を児童生徒の自己評価能力の育成と教師による見取りの二面からとらえます。ポートフォリオには,活動中に得られたメモや感想文,資料など,日常的に得られる収集物を保存します。それに加えて,意図的・計画的に様々な収集物を保存します。意図的・計画的とは,学習活動の事前,活動中,事後にいろいろな能力を評価するのに必要な資料を集めるということです。

第2章 総合的な学習の時間へどう組み込むか

1.総合的な学習の時間の基本学習モデル
 
岡山県教育センターでは,平成10年度から3年間に渡り,総合的な学習の時間に関する研究に取り組んできました。その研究の中で,表1のような問題解決的な学習の要素を設定し,図2のような問題解決的な学習の要素を取り入れた基本学習モデルづくりを行いました。


2.ポートフォリオ収集の時期
 
先に,学習活動の事前,活動中,事後に必要な収集物を集めることを述べましたが,本研究では,その期間を総合的な学習の時間の一つの単元を行う長期的な期間と,課題を追究する期間とか,まとめや発信活動を行う中期的な期間の二つに分けて収集物を集めることにします。理由は,児童生徒の能力は,長期的な期間をかけて育つものと,追究活動やまとめ・発信活動など中期的な期間で育つものがあると考えるからです。
 日常的な収集は,学習活動の途中で,児童生徒が収集したメモや資料などを時系列で保存していきます。


3.児童生徒の自己評価や教師の見取り

図3で収集したポートフォリオを用いて児童生徒が自己評価をしたり,教師が見取りをし
たりするのは,必要に応じて適宜行うこととします。その基本的な考え方としては,事前,活動中,事後に得られたポートフォリオを比較することで,変容をとらえることです。「ここがこう変わった」という点を指摘することで,変容を示します。
 ところが,ここで問題が起こります。ポートフォリオの中の収集物を児童生徒が見直して,活動を振り返り,自己評価しようとしても,その収集物のどこを比べればよいのかわかりません。また,教師が見取るにしても,評価する観点が設定されていないと,児童生徒の能力の育ちを見極めることができません。そこで,評価の観点を設定することが必要になってくるわけです。
 教師がまず,しっかりとした観点をもっておき,その観点に沿って評価規準を設定することになります。そして,その規準を念頭に置きながら,児童生徒と一緒になって目安作りをしていくことになります。


文部科学省の通知によれば,図5のように,評価の観点は各学校で設定するようになっています。次の第3章では,新指導要録における総合的な学習の時間の評価について詳しく見ていきます。
(資料)
総合的な学習の時間のねらい

(1)自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を育てること。
(2)学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探究活動に主体的,創造的に取り組む態度を育て,自己の(在り方)生き方を考えることができるようにすること。(( )は高等学校

総合的な学習の時間の評価の観点

 新指導要録には,右下の表(小・中学校)のような欄が設けられ,総合的な学習の時間に行った学習活動を記述した上で,指導の目標や内容に基づいた観点を記入し,それらの観点のうち,児童生徒の学習状況に顕著な事項がある場合などにその特徴を記載します。
 その際の評価の観点については,基本的には各学校が指導目標や内容に基づいて定めることになります。平成12年12月に出された教育審議会の答申に次のようなものが例示されています。

学年 学習活動 観点 評価
                       

(1)総合的な学習の時間のねらいに記述された資質・能力の観点に関連して,
「課題設定の能力」
「問題解決の能力」
「学び方,ものの考え方」
「学習への主体的,創造的な態度」
「自己の生き方」
(2)各教科の評価の観点に共通する観点として
「学習活動への関心・意欲・態度」
「総合的な思考・判断」
「学習活動にかかわる技能・表現」
「知識を応用し総合する能力」
(3)各学校の定める観点の例として,
「コミュニケーション能力」
「情報活用の能力」

「評価」欄には,生徒の学習状況の顕著な事項,どのような力がついたかを文章で記述します。

この「観点」の設定や「評価」を記述するのに,ポートフォリオ評価はとても役立つのです。